今月のBOOK

(2004年 6月号)




『文学賞 メッタ斬り』
大森 望  豊崎 由美
PARCO出版
2004年




ついに出てしまったのねって、こんな本というより、ガイドブック。
本当言えば、最初読むつもりはなかったのです・・・。
でも、新聞広げれば、ライター 豊崎由美は、斜め45度の視線から「読むわよね?」って微笑み、
雑誌を広げれば、SF翻訳家 大森望は、「ナッ、わかってるやろ」って見つめる。
どこへ行っても、このタイトルにぶち当たり、とどめは、新刊本のコーナーで「遠山の金さん」ばりのお侍が
刀もって斜に構えてるし〜。
ホント、わかりましたから〜、読みます、読ませていただきます〜。(強度の被害妄想)

3月号で紹介した「小説新人賞は、こうお獲り遊ばせ」という本でも、
「下読み」という現場の目から見た実状が、なかなか鋭く書かれていて、大変興味深かったです。
そして、このたびの「メッタ斬り」では、読んで字のごとく、「こんなことまで言っちゃっていいのお〜」というくらい、
かなり突っ込んだところを、お二人は果敢にもお話しておられます。

私も、読書は好きですが、かなり偏った読書家で、そんなに文学に通じているわけでもありませんし、
最近の人気作家もそれほど知らないと言うのが、本当のところです。
でも、この本では私みたいな素人さんでも、文学賞と言うものがどういうものかということを
とてもわかりやすく解説してくれていると思います。
直木賞、芥川賞くらいだったら、新聞、TVでよく報道されるから、わかっていると思いがちですが、
この二つの賞にしても、「その違いは何?」と聞かれれば、さっと答えられる人は案外少ないかも。

純文学からホラー、ミステリーまでさまざまなジャンルの文学賞を
いろいろな作品をサンプルに解説しているので
全然知らなかった作家や作品を発見できて、とても楽しいし、
知っていた作家や作品でも、さらに興味が深まるかもしれません。

私にとって、いちばんインプレッションが強かった箇所は、やっぱりラウンド2の直木賞斬りあたりでしょうか?
薄笑い浮かべながら、小手先のテクだけで云々なんて、やめてください〜!
はっきり言って、私も「ラブレター」のサビで泣いた被害者(?)の一人なんですからね。ウッ、ウッ。
それにしても、賞って、選考委員でだいぶ流れが変わるんですね。
テルちゃんのことあんまり知らなかったので、もっと勉強しようっと。

最後のラウンド13では、地方文学賞のこと触れてますが、
「文学賞甲子園」って、本当にやったら、おもしろいかもしれないと思うのです。
実は、私、地方文学賞大好き人間で、新聞に発表される作品は、目に触れる限り、かなりきっちり読みます。
そして、意外にも「この人いいなあ〜」という人に出会えたりするわけです。
まだ、プロになりきれないけど、そんな片鱗を感じさせる人。
実際、ファンになった人がいて、この人全国デビューすればいいのにと真剣に思ったりもするわけです。
「蟹と水仙の文学コンクール」のことをテーマ狭っ!と表現されているようですが、
これだって、あなどる事無かれ、なかなかのものです。
たかが「蟹と水仙」と言ったって、奥が深いんです。
この賞で、続けて大賞を受賞している女子高校生を、私は密かに「第二の綿矢りさ」と呼んで、狙いをつけているのですが・・。
でも、ジャンルが「詩と俳句」だから、ちょっと違うかな?

本編の対談は、2004年の綿矢&金原の芥川賞受賞前の編集だったようで、
最後に受賞結果を受けた緊急対談が載っています。
この二人の受賞には、両氏も納得率高かったみたいで、よかったですね。
もしかして、「壁に耳あり、障子に目あり」だったのかも。怖いですう〜。